大阪府和泉市の産婦人科医院で2017年1月、無痛分娩で出産中の女性(当時31)が意識不明になり、その後死亡した事故で、大阪地検は9日、業務上過失致死容疑で府警から書類送検されていた同院の男性院長(61)を不起訴処分としました。
命を助ける医療の現場で起きた悲しい事故。
なぜ無痛分娩で死亡?
院長が不起訴処分なのはなぜ?
判決に遺族の思いは?
問題の病院はどこ?
という事で早速調べてみました。
無痛分娩で死亡?

院長は17年1月10日、大阪府枚方市の長村千恵さん(当時31)が次女を出産する際、無痛分娩の麻酔が効き過ぎて呼吸困難に陥ったのに適切な処置を怠り、10日後に低酸素脳症で死亡させた疑いが持たれて居ます。
長村さんの夫の告訴を受けた府警に同年10月に書類送検されました。
次女は長村さんが亡くなる前に帝王切開で生ましたが、母の温もりを感じる事は出来ませんでした。
なぜ院長は不起訴?

院長は警察に対して
『パニックになり対応が追いつかなかった。』と説明しています。
地検はカルテなどの医療記録の分析や、当時の状況を知る関係者や鑑定書を作成した医師らへの事情聴取などから、長村さんが呼吸困難になった原因は、担当医だった院長が麻酔薬を注入する部分を間違えたことが原因だったと判断したとみられる。
院長がミスを犯したのになぜ、不起訴なのか?
捜査したそのうえで院長の過失の有無について、呼吸困難に陥ったかどうかを判別する血液中の酸素濃度の値にばらつきがあり、どの時点で人工呼吸器で酸素を送り込むべきだったか特定するのが困難なうえ、操作に専門的な技術が必要な人工呼吸器を院長が取り扱うことは難しかったとして、刑事責任を問えないと判断したようです。
現役看護師の意見
某大学病院の救命センターで看護師をする私の個人的な意見を述べさせて頂きます。
今回の事故の不起訴処分の理由は、簡単に言うと呼吸困難に陥った事が院長の過失であったかどうか、判断が不明である。
というものでしたが、果たして本当に不明なのか?と疑問が残ります。
通常無痛分娩などに使用する麻酔薬には、少なからず副作用として呼吸抑制というものがつきまとってきます。
医師はこれらを十分に理解し、安全に薬剤を患者や褥婦に使用していく必要性があります。
当然、呼吸抑制が起きた時にどの様に対策をするかも、事前に準備し、設備を整えておく事が求められると思います。
まして分娩を行う病院ですから、母子共に身体に異常が起きた際に、適切な対応が出来る環境か否かは、病院の管理者として必ず整えるべきだと思います。
そんな中で今回の事故は『医師の麻酔薬投与経路のミス』によって、偶発的に生み出された呼吸抑制である。
この様に考えられます。
更に、仮にそれが薬剤の影響でなかったとしても、帝王切開で手術を行う施設において、呼吸器管理を迅速に行える環境でないのにも関わらず、手術を引き受けるという事に
同じ医療者として憤りを感じます。
患者の安全を守れる環境が提供出来ないのであれば、本来それらの処置を行うべきではないと考えます。
これらを踏まえても、果たして本当に嫌疑不十分と言い切れるのかどうか、私には疑問で仕方ありません。
パニックになって対応が出来なかったと言っていますが、医師であれば、副作用によって起こる可能性のある患者のリスクに対して、リスクマネジメントが出来ることは最低限の心構えだと思います。
婦人科を巡る医療事故及び医療過誤においては、陣痛促進剤使用後に母親が死亡こちらの事件も、記憶に新しい所です。
合わせてご覧ください。
遺族の思いは?

遺族は処分を不服として検察審査会に審査を求めるということです。
また長村さんの父、安藤雄志さんは次の様にコメントしています。
『この事故が不起訴なら、一体どの事故が起訴になるのか。』
ご遺族の気持ちを考えると、辛くてやり場のない気持ちで仕方ないと思います。
これに対して、院長の代理弁護士は
『ノーコメントです。』と返答しているそうです。
なんとも無責任な回答だなと思ってしまいます。
問題の病院はどこ?

問題の病院は、大阪府和泉市にある老木レディスクリニックという事が分かっています。
住所:大阪府和泉市あゆみ野1-4-1
医師:老木 正彰

ホームページ上では、「当院では当面、無痛分娩を控えます。」とコメントしています。
まとめ
院長の薬剤投与ミスによって生まれた呼吸困難にも関わらず、呼吸を補助する設備や人員は確保されていなかったという、なんとも矛盾の大きな事故となりました。
裁判の進行を追ってみて行きたいと思います。
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